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政治

外務省が隠す 通商外交「大失態」

WTO「要職喪失」の重いツケ

2016年7月号

 今年二月に十二カ国が署名した環太平洋経済連携協定(TPP)は、肝心の日米両国の国内承認手続き(批准)が遅れ、中ぶらりんの状態が続いている。米国では、有力大統領候補のトランプ、クリントン両氏がそろってTPPに反対。日本では四月に衆院TPP特別委員会で審議が始まったが、特別委の西川公也委員長のTPP内幕「出版計画」や、野党の情報公開要求に対して、政府側が真っ黒に塗りつぶした書類の提出で応じた「海苔弁当」事件が重なり、審議は秋の臨時国会に先送りされた。
 TPPに全精力を傾けてきた官僚たちは脱力感に陥り、人事異動した担当者も多い。都知事選挙の候補者調整などで自民党都議連の会長として忙殺される石原伸晃TPP担当相は「(TPPは)忘れ去られた観がある」と、ほとんど他人事だ。欧州連合(EU)との経済連携協定についても、英国のEU離脱で「絶望的」(経済産業省)というあり様だ。
 しかし、日本がぼんやりしている間にも、水面下では国際通商分野の冷徹な交渉が着々と進んでいる。もちろん主導力を発揮しているのは米国だ。安倍晋三首相がホストとなった五月二十六~二十七日の先進七カ国首脳会議(・・・