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経済

コスモ石油の哀れな「解体シナリオ」

経産省が描く「元売り再編」最終章

2016年7月号

「この人はね、石油公団を潰した手柄で、小泉政権の総務会長になったんだ」
 五月三十日、東京・南青山の青山葬儀所は小糠雨の中、三千人の会葬者で溢れていた。多くの政治家、経営者に交じり、経済産業省の現役官僚の姿もあったが、参列したある通産省(現経産省)OBが漏らした追想には、毒のある皮肉が含まれていた。
 故人は元通産相の堀内光雄氏、八十六歳―。富士急行の社主であり、自民党宏池会の重鎮でもあったが、何より大臣在任中の一九九八年、石油開発案件へ出融資する石油公団の一・三兆円の不良債権を指摘し、「天下り役人の楽園は解散しろ!」と獅子吼したことで知られる。その反骨を小泉純一郎元首相に買われ、自民党総務会長に就任、通産省の抵抗を制し、三年後に廃止決定を勝ち取った。
 実際、葬儀で弔辞を述べた宏池会の岸田文雄会長も「わが国の行革の先駆者」と持ち上げている。が、安倍晋三首相の弔辞(代読)には石油公団に関する言及は一切なかった。おそらく経産省出身の今井尚哉・首相政務秘書官が事前にチェックしていたのだろう。なぜなら、経産省は石油開発行政の手足となる独立行政法人の大幅な権限拡充・・・