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政治

《土着権力の研究》鹿児島県 元JA県中央会会長・川井田幸一

最強農業県を牛耳る「農協のドン」

2012年11月号

 周囲にずらりと立ち並ぶ、「TPP参加断固阻止」「日本の食と暮らし・いのち・を守ろう」と銘打った緑や赤の旗。その中を、「緑の旗を持った農家の皆さん!」と呼びかけながら、候補者への支持を訴えるのは、この日の応援弁士として現地に駆け付けた小泉進次郎自民党青年局長。応援演説の最後を締めくくる恒例の「ガンバロー三唱」で音頭を取るのは、「必勝」の鉢巻きをした県農協(JA)の“政治部隊”である県農業者農政運動組織連盟(農政連)の女性だ。選挙カーの上で候補者と小泉氏の間に立って、「ガンバロー」とこぶしを三度振り上げるその姿は、農協と自民党が二人三脚で選挙を勝ち抜くという強固な連携関係を物語る―。

 鹿児島三区補選(十月二十八日投開票)のラストサンデーとなった十月二十一日、県西部のいちき串木野市のJAさつま日置串木野支所前で開かれた、自民党公認の宮路和明・前衆議院議員の街頭演説会での一幕だ。安倍晋三総裁となって初めての国政選挙とあって、自民党は告示日(十六日)に石破茂幹事長が駆け付けるなど大物議員が次々と現地入りし、そのたびに周辺一帯は自民党支持者で・・・