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経済

《クローズ・アップ》綱川 智(東芝新社長)

会社の幕引きを託された「傍流社長」

2016年7月号

「新生東芝アクションプランで、中長期の安定成長を実現するよう邁進してまいります」
 六月二十二日に開かれた東芝の株主総会の最後に、新社長として紹介された綱川智氏は型どおりのセリフを棒読みした。
「仕方ない」と擁護する向きもある。一九五五年生まれの綱川社長は七九年に東京大学教養学部を卒業し東芝に入社した。十年目以降は一貫して医療機器部門を歩き、米国や欧州の現地法人を経て、二〇一四年にヘルスケア事業担当の執行役上席役員になった。不正会計問題を受けて、昨年九月に代表執行役副社長に就任したが、出身母体である東芝メディカルはこの春にあえなく売却されてしまった。
 綱川氏が新社長に選ばれた理由は、巷間言われている通り「不正会計に関わらなかったから」である。「医療機器部門をキヤノンに高く売りつけた手腕を買われた」というのは一種の皮肉だ。東芝の取材を続ける経済記者は「彼に原発や半導体でビジョンを示せというのは無理だ」と同情を寄せる。
 いかに「傍流社長」とはいえ、綱川氏には東芝再建という責務がのしかかる。しかし、彼の前には主力の原発、半導体事業で難題が待ち構えて・・・