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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》自衛隊「将官不祥事」一覧

モラル決壊「高級幹部」の醜悪な罪状

2016年10月号

 新渡戸稲造は名著『武士道』で、もののふの心得を説く。「名誉は境遇から生じるものではなく、それぞれが自己の役割をまっとうに努めることにあるのだ、ということに気づいているのは、ごくわずかの高徳の人々だけである」。どんな組織よりも高潔性が求められる自衛隊の将官クラスで、この金言と対極の不祥事が頻発している。入手した防衛省の内部文書「平成元年以降の将官の懲戒処分等状況」によれば、その数は二十八人にも及ぶ。国家存亡の危機で指揮を執る将官たちは、なぜここまで堕落したのか。その「事件簿」から浮かび上がるのは、命令に絶対服従の上意下達の特殊な集団であるが故の反動ばかりではない。国民以上に「平和ボケ」して権威にあぐらをかく精神構造こそ、腐敗の温床なのだ。

警察に部下を売った「闘将」

 手元の事件簿の後段に記憶に新しい不祥事が載っている。昨年十二月二十二日付で渡部博幸陸将が「元上司のOBに対し、陸上自衛隊教範を譲渡」して戒告処分となり、書類送検された。そう、在日ロシア大使館の元駐在武官に情報漏洩した、あの事件である。
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