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WORLD

増加必至の南アジア「イスラムテロ」

二億人を洗脳する「インド人説教師」

2016年8月号

「これはIS(イスラム国)によるテロではない」
 七月一日にバングラデシュの首都ダッカで起こった人質テロ事件後、同国政府はこう繰り返した。なぜか―。
 事件を起こした過激派組織「ジャマトゥール・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)」の活動家は一万人、青年組織を含めると十万人いるといわれるが、彼らの背後は複雑だ。まず同国は、人口の九割がムスリムというイスラム教国だが、憲法で世俗主義を謳っており、パキスタンのようなイスラム国家ではない。
 与党アワミ連盟は、「反パキスタン」「親インド」であり、ハシナ首相は世俗主義を強硬に貫くため、敵対勢力が多い。イスラム政党やその友党の他、表向き市民団体を装う実質的宗教団体の「ヘファジャテ・イスラム」などだ。それだけでなく、今回のテロを実行したJMBを筆頭とする国内過激派や、近隣国の過激派、パキスタンの諜報機関、ISなども連なる。
 これらの勢力には方法論は違っても「イスラム国家建設≒政権転覆」という共通の夢がある。彼らの資金はむろんサウジアラビアなど中東スンニ派諸国から来ている。これらはいずれも大なり小なり過激・・・