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米国「民間軍事会社」の異様な繁盛

テロとの戦争で深刻な「傭兵依存症」

2016年9月号


「(イスラム過激派)『イスラム国(IS)』のテロリストを殺す仕事で、六十万ドル(約六千万円)を稼げます」―。アメリカ人の度肝を抜くこんな広告が、傭兵市場に出回っている。
 腕次第では年収二千万円が当たり前と言われるほど、民間軍事会社が米国で活況を呈している。それというのも、米軍が海外作戦の主力を猛烈なペースで民間委託に切り替えているためだ。政権交代を前に、米政府の傭兵依存症(中毒)は強まるばかりである。

アフガン米軍の約八割は民間

 米国水準でも衝撃的な年収を提示したのは、アリゾナ州拠点の新興企業「G7S」だ。
 米大手メディアが同社の取材に殺到したところ、三十代半ばのポール・ホーナー社長は、兵隊言葉そのままに放送禁止用語を連発し、「俺たちは政府がやらないことをやっているんだ。経験は問わないから、やる気のある人に来てほしい」とまくしたてた。
 米軍は公式には、対IS作戦で地上戦闘部隊を展開しておらず、社長も「ISを殺す」仕事の中身を語らなかった。ただし、米軍の正規の派・・・