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「太平洋の覇権」よろめく米国

オバマ「対中外交」の負の遺産

2016年10月号特別リポート

 日本がポツダム宣言を受諾した四日後のニューヨーク・タイムズ紙に「太平洋の覇権、いまやわが手に」の見出しが躍り、三十五歳の若さだったジェームス・レストン記者が「太平洋の『力の均衡』は、もはや存在しない。少なくとも当面、かつていかなる洋上にも集結されたことのない海、空、科学力のかぎりなく圧倒的な結合に支えられた米国の『力の優越』だけがある」と書いた。
 以来、米国優位の地位は、国際環境が大きく変化したにもかかわらず、基本的には不変と言っていいだろう。が、ブッシュ前政権批判の立場もあって軍事力の行使にすこぶる慎重な政策を貫いてきたオバマ政権には、大きな負の遺産が露わになってきた。「軍事力の強化と経済の機会拡大の二戦略をすり合わせた」(ゼーリック前世銀総裁)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)がオバマ政権下で批准されるかどうかが不透明になっているのだ。仮に成立したにせよ、トランプ共和党、クリントン民主党両大統領候補がTPP「反対」を競い合う珍現象が米国内に出現していることは、太平洋における均衡を崩す結果をもたらさないのか。
 八年間にわたるオバマ政権のアジア政策の成否を判・・・