三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

スズキはなぜトヨタの軍門に下ったか

八十六歳「修会長」の惨めな晩節

2016年11月号

「スズキとトヨタ、業務提携に向けた検討を開始」―このニュースリリースが発表された十月十二日の午後三時、その内容とともに注目されたのはトヨタ自動車の豊田章男社長とスズキの鈴木修会長が顔を揃える記者会見の会場だった。スズキは決算説明会などを除き、業務提携や新車発表会など修会長が出席した過去の記者会見は、すべて会長自身が東京での定宿とする東京都千代田区のホテルニューオータニで開いてきた。それが「スズキの常識」とされてきた。
 だが、今回の会場は東京・水道橋にあるトヨタ東京本社の地下大ホール。ここは章男社長が出席して東京で開く年二回の決算説明会のほか、最新技術の発表会や記者説明会など自社単独の会見で使う場所。トヨタは二〇一五年五月にもマツダとの提携拡大を発表した。この時に章男社長と小飼雅道マツダ社長が揃って会見したのが東京・六本木のグランドハイアット東京だったことを考えると、今回のトヨタとスズキの会見場の異例さは明らか。トヨタがわざとこの場を設定したとしか考えられない。
 今回の提携はそもそも修会長がトヨタの豊田章一郎名誉会長に相談を持ちかけたことに端を発し、章男社長と修会・・・