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習近平の「権力掌握」は本物か

毛沢東には程遠い「核心」の実情

2016年12月号

中国の習近平国家主席が十一月、ペルーのリマで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)非公式首脳会議の会場に意気揚々と乗り込んだ。
 APECは、米国がアジア太平洋の盟主として振る舞う外交舞台だった。これまで米国のオバマ大統領は、経済のTPP、軍事の米軍アジア・リバランスという、二つの中国包囲網を敷いて、台頭する中国をおさえてきたが、次の大統領の座を反TPPのトランプ共和党候補に奪われ精彩を欠いた。
 トランプ当選は米国自身の選択だが、習近平にすれば中国が実力でアジア太平洋の覇権を握る日が来た気分だろう。リマの米中首脳会談では、冒頭、習近平が勝者の薄笑いを浮かべ、オバマは顔をそむけた。習近平の心中は容易に想像できる—米国のように指導者が交代したら中華民族の偉大な復興は実現できない、次の共産党大会での総書記再選はもちろん、終身、指導者を続けなければならない、という執念だろう。
 その証拠に、習近平はリマに来る前、党中央弁公庁に「大国には『核心』が必要だ」というキャンペーンを命じている。中国で「核心」は、任期のない「党の最高指導者」の意味で使われ・・・