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経済

ズタボロの首都圏「電力インフラ」

東電に「大停電」を止める術なし

2016年12月号

 午後三時半前後というのは、東京電力にとってどうやら鬼門のようだ。二〇一一年三月十一日のほぼこの時刻、東北地方太平洋沖地震に伴う大津波が福島第一原子力発電所に襲来。原子炉四基が損壊するという未曽有の大惨事を招き、東電の経営に致命的な打撃を与えた。その五年七カ月後、先の十月十二日のこの時刻にも、東電は首都圏大停電というトラブルを起こしてしまった。福島と東京—場所は違えど、二つの事象にはある共通項がある。それは、前者と後者ともに首都の機能を壊滅させるのに十分なインパクトがあったという点だ。
 十月十二日の首都圏大停電の原因は、地中送電ケーブルの火災だった。午後二時四十九分、二百七十五kVの城北線で絶縁破壊が発生。送電線が破裂し、中の油が漏れ出したことで、火災を引き起こした。場所は埼玉県新座市にある新座洞道新洞二十六号付近だ。あろうことか、この洞道(電力ケーブルが通るトンネル)には同じ二百七十五kVの北武蔵野線もひとまとめに収容されていた。北武蔵野線も間もなく機能不全に陥り、午後三時半にこことつながる練馬変電所管内が停電。十分もたたないうちに、城北線が行き着く豊島変電所・・・