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社会・文化

米国名門オーケストラの 「生き残り戦略」

活路求めて相次ぎ「中国進出」

2016年12月号

 去る五月二十二日、浦東国際空港から市内に向かうリニア線沿いの上海国際観光リゾート地区に新設された野外劇場で、上海フィルハーモニックとフィラデルフィア管弦楽団による合同コンサートが開かれた。オープンまで一カ月を切った上海ディズニーランドを中心に、新たな観光拠点となる七十三平方キロメートルもの広大な新整備地区で開催される、初の一般公開イベントである。
 この演奏会のため、アメリカでキャリアを積む二十四歳の中国人作曲家兼ピアニストペンペンゴンが新作《二〇一六春之序曲》を書き下ろした。上海フィル首席フルートが奏でる中国の笛の音を、フィラデルフィア管奏者が受けて始まる祝典曲は、「夜来香」など租界時代を回顧させる旋律も織り込みつつ、最後はディズニー音楽の断片を次々と繰り出し、主催者がディズニー・フランチャイズと特別な関係にあることを印象づけた。
 このオーケストラがアニメーション映画『ファンタジア』で演奏した団体と知る聴衆がどれほどいるかはわからないが、地元音楽家と席を並べた二十余名のフィラデルフィア管団員は、世界で最もゴージャスで美しいと賞讃される「フィラデルフィア・サウン・・・