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米国「大富豪」のカネの使い方

寄付で社会を変える「慈善資本主義」

2017年2月号

 宇宙開発、疾病撲滅、社会改革—。莫大な富の蓄積を続ける米国の超富裕層が、政府や国際機関の独壇場だった分野に大きく踏み込んでいる。「節税が目的」「金持ちの道楽」など外野の騒音はかまびすしいが、国家を超える規模の活動もある。動機は何だろうか。

資産九九%を寄付する

 新年早々、景気のいい話が飛び出した。
 マイクロソフト社の創業者とその妻の「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」が、ウォーレン・バフェット氏から譲渡されていた「バークシャー・ハサウェイ」社株六千万株を、向こう三年間で売却すると発表した。発表時の株価で総額九十六億ドル相当。チャド(人口約一千四百万人)やマダガスカル(同約二千二百万人)の国内総生産(GDP)に匹敵する金額だ。
 バフェット氏は一月末、株式譲渡の動機について「私が一生に使う金額は、稼いだ額の一%にもならない。残りの九九%をどうする? 私が持っていても仕方がない」と述べ、順次、資産の寄付を進めると語った。米「フォーブス」誌の推計では、同氏の資産は七百十六億ド・・・