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中国・李首相「退任説」の現実味

習近平独裁への「反撃」を狙う奇策

2017年3月号

 今秋に開催される中国共産党大会は歴史に残る激変人事の舞台となりそうだ。最大の波乱要因は李克強首相の去就。首相を退任して全国人民代表大会(全人代)委員長への就任が取り沙汰されている。それだけ捉えれば、李氏が権力闘争に敗れるかにみえるが、全人代が本来持っている機能を実質的な権力に変え、立法府として、党を基盤とする習近平党総書記に対峙する大構想が背景にある。国民の共産党への飽き、嫌悪感が強まるなかで李首相は大きな賭けに出る。後任の首相は二人の「王」すなわち王岐山政治局常務委員か、汪洋副首相のいずれかになるとみていい。
「掌に力を込め、砂を掴み切ったと思った端から指の間を砂が次々とこぼれ落ちる」。習総書記は今、権力についてこんな感慨を抱いているのかもしれない。表面的にみれば、習総書記は党、人民解放軍はもちろん経済政策なども自らが主導し、李首相を寄せ付けない絶対的な基盤を築いた。
 江沢民総書記と朱鎔基首相、胡錦濤総書記と温家宝首相の過去二代の指導部コンビとはまったく異なる独裁構造だ。二〇一二年の就任以来、続けてきた反腐敗闘争は共産党幹部、役人を震え上がらせ、各省・市のトッ・・・