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政治

売国農政「種子法廃止」の狂気

食糧安全保障を脅かす「自殺行為」

2017年4月号

 日本はたったの三九%—。食糧安全保障を語るときに、必ず引き合いに出されるのが、この食料自給率(カロリーベース)だ。しかし、これは生産量を評価する一つの、それも国際的にはまったくマイナーで相手にされていない供給熱量に着目した指標にすぎない。
 食糧安全保障は、国内生産だけでなく、海外からの食料調達(輸入)と備蓄の三つの柱で構成されるというのが国際的な常識だ。そして国内生産の実力を見定める指標は、熱量供給量ではなく、農地と水を別格とすれば、ヒト(農業就業者)、モノ(生産財)、カネ(資金)の三要素だ。生産財の中でも重要なのは、燃料、種子、農機具(トラクターやコンバイン)、飼料(畜産の場合)、肥料であり、これらの一つでも枯渇すれば生産を維持できなくなる。
 こうした国際常識に即して診断すれば、日本の農業生産の最大の弱点は、高齢化と後継者難が急激に、しかも同時進行しているヒトであり、生産財の中では海外依存度が極めて高い燃料(石油)、飼料(家畜用配合飼料)、肥料(リンなど)だ。カロリーの高いコメを過大評価することで「約四割を自給」と錯覚しがちだが、日本の国内生産は・・・