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経済

東京ガス「我が世の春」の死角

ガス自由化で「高転び」の予兆

2017年4月号

 東部戦線異状なし—。四月一日、都市ガスの小売り全面自由化を迎えたエネルギー業界にこんなフレーズが流行している。あるガス関係者の皮肉は辛辣だ。
「今や東京ガスは東京電力に代わる首都圏の覇者。岡本さん(毅会長)の経団連副会長も堂に入ってきたよ」
 なるほど、近畿圏では大阪ガスと関西電力が家庭用ガス需要の争奪戦にしのぎを削るが、首都圏は別世界のように無風状態。一年前、異業種企業を含めて鳴り物入りの参入が相次いだ電力全面自由化とは様変わりし、東ガスの金城湯池には葉音ひとつ立たない。原因は東京電力ホールディングス(HD)の体たらくにある。
 小売り会社の東京電力エナジーパートナー(EP)は、昨年来の料金システムトラブルや営業体制の未整備がたたり、ガス参入は七月まで遅れる。初年度の顧客獲得目標はわずか四万件だ。代わってテレビCMを積極投下しているのは提携先のLPガス大手、日本瓦斯(ニチガス)。和田眞治社長は、天然ガスの調達先を東ガスから東電EPに切り替え、十一万件獲得へ大号令をかけるが、しょせん“匹夫の勇”にすぎない。
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