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日本の科学アラカルト80

より強く便利に
古くて新しい「ガラス研究」

2017年4月号

 紀元前数千年から人類が使ってきたとされるガラス。住宅やビルの窓ガラスはもちろん、自動車や家具などに用いられるほか、電気製品などにも使われている重要な材料であり、国内の市場規模だけで一兆円を超える。
 これだけ多くの場所で使われているにもかかわらず、ガラスの性質については謎が多く残されていた。有名なのは「ガラスは液体か固体か」という命題だ。「固体」とはご存じの通り、規則正しく結晶が並んでおり特定の条件の下ではその構造を変えることがない。ガラスは固体のように見えるが、実際にはその結晶構造がいわゆる固体のように規則正しく並んでいないばかりか、液体のような性質を持っている。身近にある窓ガラスでさえ、一千年というオーダーで考えた場合には形を変えていくことが知られている。
 この長年の命題について、ひとつの結論を出したのが京都大学大学院工学研究科の山本量一教授らのチームだ。山本教授は英ブリストル大学の研究者らと共同で、コンピュータシミュレーションを使った研究を行い、その成果を二〇一五年に発表した。
 チームはガラスを構成する分子のひとつひとつの動きに着目。一見すると・・・