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社会・文化

種子法廃止が招く「国土荒廃」

「里山・田園」を叩き壊す安倍政権

2017年5月号

 前号で危険性を指摘した主要農作物種子法(種子法)の廃止法案は、本格的な議論がほとんどないまま、四月十四日に参院で可決・成立してしまった。この日は日本が主食、つまりコメの安定供給を放棄した起点として記憶されるべきだ。種子法は、日本がサンフランシスコ条約に調印し主権を回復した一九五二年に成立した。少なくとも主食のコメ、麦、大豆だけは自給を目指すという強い覚悟を示し、それを米国なども認めたのだ。
 種子法は来年四月一日に廃止され、コメは「主要農作物」の地位を失う。品不足が話題のジャガイモと同様、稲作の経営規模は拡大し、中小農家の撤退は加速する。経営は効率化され、価格は安くなるかもしれない。しかし一方で、食料安全保障の基本である産地の分散化と品種の多様性は失われ、天候や病虫害の影響を受けやすくなり、リスクは拡大する。かつてジャガイモは全国どこでも生産された。しかし今やカルビーの規格を満たす特定品種のジャガイモの生産は北海道十勝地方に集中している。全国各地で栽培されている多様なコメの生産・流通の将来は、北海道の台風による被害で店から姿を消したポテトチップスと同じ運命だ。
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