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「一帯一路」は中国を衰退させる

新経済圏構想はただの「夢物語」

2017年6月号

 習近平政権が国運を賭ける「一帯一路」政策が本格的に動き出した。五月中旬に北京で開いた「一帯一路サミット」にはプーチン大統領ら二十九カ国の首脳と約百三十カ国の代表団が参加。中国から欧州に至る陸と海の新経済圏構想に沿線国は盛り上がっている。中国の資金で鉄道、港湾、道路などインフラを構築してくれる願ってもないチャンスだからだ。だが、中国では大盤振る舞いで周辺国を手なずけた「朝貢外交の二十一世紀版」という批判と巨額支出への不満が静かに広がっている。一帯一路は盤石にみえる習体制の命取りになる恐れもあるのだ。
 一帯一路の「一帯」は古代のシルクロードと同じくユーラシア大陸を貫く陸路。すでに「中欧班列」と呼ばれる貨物列車の運行が始まっている。重慶―独デュイスブルク、義烏(浙江省)―ロンドンなど一万キロを超える距離を二~三週間かけて結ぶ。中国で生産された衣料品、靴、鞄から家電製品が西に向かい、欧州からワイン、ウイスキーやインテリア、自動車部品が東に向かう。二〇一一年の試験列車から数えれば運行回数はのべ三千回を超え、「一帯」は順調に発展しているかにみえるが、実態は逆だ。

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