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米国を蝕む巨額「学生ローン」

「百兆円超」財政と家計を壊す爆弾

2017年7月号

「多くの新入社員が学生ローンを抱えて大変そうだ」
 在米日系企業関係者は心配顔でささやいた。相変わらず米国の信用創造の質は低い。米国の家計債務残高は今年の第1四半期末に十二・七三兆ドルを突破し、過去最高だったリーマンショック前の二〇〇八年第3四半期の十二・六八兆ドルを八年半ぶりに更新した。
 ただ、サブプライムローン問題が顕在化した八年半前と決定的に異なる点は、住宅ローンの家計債務に占める比率が厳しい規制で低下した一方で、学生ローンが構成比二番目となったことだ。今やその債務総額は一・三四兆ドルと、自動車やクレジットカードのそれを上回っている。我々が生きている「極端に金融依存化した現代」では、利息を支払う「経済成長の奴隷」を見つけることが必要だ。高等教育にそれを見出した米国では、既に学生ローン利用者が四千四百二十万人に達している。しかも膨張は止まりそうにない。

不良債権化する連邦政府の資産

 米国の若者は苦しい。景気拡大により失業率が五%を切り、完全雇用が近付いているが、二十五歳以下の失業率・・・