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連載

Book Reviewing Globe 400

北朝鮮核放棄の「失われた機会」

2017年10月号

 トランプ政権は、北朝鮮の核・ミサイル能力を無力化するために軍事攻撃するだろうか。
 米国は、そのオプションは「テーブルの上にある」との立場を繰り返している。しかし、トランプに事実上、解任されたスティーブ・バノン上級顧問は、メディアに対して「軍事作戦などない」と断言した。トランプの本心は軍事作戦ではないということのようだ。
 よく知られているように、米国が北朝鮮の核施設を軍事攻撃で破壊することを真剣に検討したことがあった。
 軍事作戦を提案したのは、一九九〇年代、クリントン政権の国防長官ウィリアム・ペリーだった。
 九四年五月十四日、北朝鮮は、寧辺の原子炉から使用済み燃料を運び出した。燃料を再処理にかける最後のステップである。すでに国際原子力機関(IAEA)の査察官は追放されていた。
 このままでは北朝鮮は六カ月以内に、六つから十の核兵器をつくるのに十分なプルトニウムを生産することになる。
 ペリーは、シャリカシュビリ米統合参謀本部議長とラック在韓米軍司令官に、寧辺の再処理工場をクルーズミサイルで「外科手術的」に除去する計画を・・・