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政治

小選挙区制は日本に合ってない

中北浩爾(一橋大学教授)

2017年10月号

―安倍晋三首相が、国政の重大争点がないのに衆議院を解散しました。

中北 首相は争点を極力なくして、低投票率で勝ってきた。小泉純一郎元首相型の大衆を熱狂させる人ではない。
 私は鳩山由紀夫元首相に退陣の理由を質問したことがあるが、普天間問題ではなく母親からの資金提供問題をあげ、「自分個人の問題で党の同志が参院選で落ちるのを避けたかった」と語った。政治家にとって自身や家族の疑惑は心理的重荷だ。支持率が回復したので、首相個人や昭恵夫人がかかわる森友・加計問題をリセットしたいというのが、今回の決断の動機だろう。

―日本は一九九六年の総選挙から小選挙区制に移行しました。「二大政党制」はなぜ実現しないのですか?

中北 九〇年代の小選挙区制の導入などの政治改革は、二大政党による政権交代の実現が目的だった。だが、二大政党制には社会基盤も不可欠だ。英国では、「資本家(保守党)と労働者(労働党)の対立」、米国では「リベラル(民主党)と保守(共和党)の対立」がそれぞ・・・