三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

美食文学逍遥12

フランス人の味覚の風景
福田育弘

2017年12月号

フランス人の味覚の風景

 フランス地中海沿岸地方の魚料理といえば、なんといってもブイヤベースだが、ブイヤベースには、ニンニクと唐辛子をすり潰し、オリーヴオイルで溶いた調味料的なソース、ルーユがつきものだ。ときに、パンやジャガイモをいっしょにすり潰したり、オリーヴオイルとともにブイヨンを加えたりするが、基本となるのはニンニクとオリーヴオイルである。
 この二つは南仏を代表する食材で、南仏料理の魂といってもいい。
 このルーユを唐辛子なしにして卵黄を加えると、アイヨリになる。南仏風マヨネーズともいうべきソースだ。
 このアイヨリを南仏人は大変好む。もちろん、料理のたびごとにその場で作る。その場で作るから美味しい。出来あいの化学調味料の入ったマヨネーズの比ではない。
 アイヨリは料理の名前でもある。アイヨリソースをつけて魚や野菜を食べるのだ。昨今は南仏のレストランでは、「アイヨリ・ガルニ」と表記していることが多い。ガルニとは「つけ合わせあり」という意味で、茹でたタラやニンジンやジャガイモ、アーティチョークやカリフラワーなどが定番だ・・・