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政治

TPPはもう死んでいる

大筋合意は政権とメディアの「大噓」

2017年12月号

 十一月上旬からのベトナムとフィリピンの歴訪を終えた安倍晋三首相は十四日にマニラで記者会見し「(米国を除く)十一カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)が閣僚レベルで大筋合意に達したことは大きな前進だ」と、ベトナム・ダナンで同月九~十日に開いたTPP閣僚会合の成果を誇示した。
 主要メディアも「保護主義の防波堤に」(十二日付日本経済新聞)、「保護主義的な動きが強まるなか、今回の合意が持つ意味は小さくない」(同朝日新聞)など、安倍政権の通商政策をそろって評価した。
 しかし、十一カ国がどこまで合意したのかは、疑わしい。会合に出席していたカナダの閣僚は「大筋合意していない」と反論、トルドー首相の欠席でTPP首脳会合は流会した。政府の発表のまま「大筋合意」とする報道は多いが、実態はせいぜい「合意に失敗、協議の継続を確認」といったところだ。
 しかも、トランプ米大統領は「私は米国を第一に考える。インド太平洋との国とも二国間通商協定を選ぶ。米国を縛る多国間協定には参加しない」とTPPへの復帰を明確に否定した。
 米国の離脱でTPPの経済規模は三分の一に縮小・・・