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WORLD

米露「逆転」で激変の中東新秩序

ばら撒かれた次の「戦禍の火種」

2018年1月号

 ドナルド・トランプ米大統領が就任二年目を迎える中、米国の中東からの戦略的・地政学的撤退が続いている。トランプ大統領は、「イラン核合意の破棄」を望み、「エルサレムをイスラエルの首都と認定」するなど、過去の米政権の中東政策を次々と破壊しつつ、現地の同盟勢力を切り捨て、影響力を縮小させている。
 代わって浮上したのが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領率いる「ロシア=イラン=トルコ三カ国枢軸」で、シリアや湾岸産油国のカタールまで引き付けて、中東の最有力勢力になった。米国の軍事プレゼンスが減る中で、二〇一八年は、米国の二大同盟国、サウジアラビアとイスラエルにとって、試練の年である。

IS大脱出を黙認した米国

 トランプ政権下での中東情勢を最も劇的にあぶりだしたのが、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の運命だった。ISは一七年十月、イラクのモスルとシリアのラッカという二大拠点を相次いで失い、「カリフ国」は事実上、地図から姿を消した。
 ところがこの断末魔に際し、IS中枢を含む数千人の戦闘員・・・