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中東の不安定要因「アブダビ皇太子」

圧政や戦争犯罪が国際問題に

2018年2月号

 アラブ首長国連邦(UAE)が独立してまだ間がない頃の話である。一九七六年の冬、首都アブダビの女子高の門前で騒ぎたてるナンバープレートのない白い車があった。運転していたのは中学生ぐらいの若者で、車はやがて王宮の門に消えた。
 それは、誰もが知っているザーイド大統領(アブダビ首長国首長)の三男坊ムハンマドであった。責任感の強いエジプト人の女校長は、大統領に直訴した。「殿下の非行をやめさせてください」。
 女校長はこの通報をしたがためにクビになるのだが、この非行少年こそ、後にアブダビ皇太子となるムハンマド・ビン・ザーイドであった。同名のサウジアラビア皇太子(ムハンマド・ビン・サルマン)が何かと話題をさらうため、その陰に隠れて、あまり注目されていないが、彼こそ、昨年六月の対カタール断交や、同年十二月の湾岸協力会議(GCC)の事実上の機能停止(代わりとなるUAE・サウジ二国間協力協定を発表)といった強硬な共同戦略を打ち出した張本人と目されている。
 とにかく、「ムスリム同胞団」(=イスラム過激主義者)が大嫌いである。病気のため公に姿を現すことのない兄ハリーファ首長・・・