三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

米朝会談後の危うい東アジア

退く米国と「空白」を狙う中国

2018年4月号

 ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談が五月に行われた後に、米国の西太平洋からの撤退が進むとの観測が、各国外交筋の間で浮上している。同じ月に、対イラン制裁再開の是非を決める期限を迎えるためで、トランプ政権は北朝鮮とイラン双方での軍事危機を望まず、対イラン強硬策を優先させると見られている。
 トランプ政権はまた東アジアで、日本と中国を標的に貿易戦争を仕掛けており、米朝首脳会談後は韓国にも厳しい姿勢を示すことが予想されている。米軍が焦点を中東にシフトさせれば、安倍晋三首相は東アジア安全保障の空洞化と貿易戦争という、二重の危機への対処を迫られることになる。

「非核化」の口約束を交わす会談

 平昌オリンピック・パラリンピックの興奮が残る三月下旬のソウル。在韓米軍の、ちょっとした変化が政府関係者の耳目を集めた。
 四月実施の米韓合同軍事演習の期間中に、約百人の民間の米国人を対象にして「非戦闘員退避訓練」を実施する。その際に、退避先を米本土にするというのだ。
・・・