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「中台緊張」習近平の焦り

米国の「積極関与」で荒立つ両岸

2018年5月号


 四月中旬、南シナ海で「中国史上最大」と銘打った観艦式が行われた。北海、東海、南海の三艦隊から集めた四十八隻の新鋭艦と七十六機の軍用機、一万人を超す将兵が海南島沖に結集し、ミサイル駆逐艦「長沙」に乗る共産党中央軍事委員会主席、習近平の閲兵を受けた。
 軍人に自らを毛沢東と同じ「最高統帥」の敬称で呼ばせる習近平の目の前で、空母「遼寧」の飛行甲板上を殲・15戦闘機が離着艦する様子を初公開した。統帥は迷彩の戦闘服、戦闘帽を着用して戦時体制の緊張感を漂わせ、艦上からこう訓示した。「強大な海軍を建設することが、今日ほど緊迫したことはかつてない。海軍の現代化を断固、加速せよ」。
 習主席はすでに強大化した海軍に満足していない。むしろ軍拡を急げと苛立っている。そのわけを中国の軍事専門家は「台湾武統(武力統一)宣言だ」と読み解く。政権二期目の五年のうちに強大な武力を背景にして台湾を併合し、その実績をもって三期目の第二十回党大会(二〇二二年)で毛沢東のような党主席という至高の地位に就こうとしている。台湾併合を目指すなら、五年という持ち時間に焦りを感じても不思議ではない。{・・・