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米中「半導体戦争」は激化必至

貿易摩擦の本質は「イノベーション覇権」

2018年6月号

 トランプ政権が口火を切った米中貿易摩擦は、一触即発状態と緊張緩和を繰り返しながら、着実に落としどころに向かっている。中国が多様な工業製品を米国に輸出し、米国は大豆、石油など資源を中国に輸出する相互補完関係は不均衡を一定規模に抑制すれば相互に利益のある持続可能な関係だからだ。この紛争で米中が戦っている真の舞台は半導体、通信をめぐる「イノベーション覇権」である。劇的に台頭する中国の情報通信産業を今、叩かなければ、産業、経済だけでなく、金融、軍事も含めた米国の優位性が揺らぐという危機感が米国側にはある。
 鉄鋼、アルミ製品から始まった今回の米中貿易紛争で、現実に発動された両製品への追加輸入関税を覚えている人はもはや限られた当事者のみだろう。紛争は知的財産権侵害に展開し、さらに中国の情報通信産業の根幹の企業である中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)などへの制裁に移っているからだ。
 貿易赤字額の縮小を要求する傍らで、個別企業をやり玉に挙げ、「米国製部品の供給ストップ」という〝匕首〟まで突きつけたこの手法は、日本人にとっては見覚えがある光景だ。一九八〇年代に日米関係・・・