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インド経済「急失速」の暗雲

迫る金融危機と原油高の痛手

2018年8月号

「予想通りの成長率を維持すれば、来年は英国を抜いて第五位の経済大国となるだろう」
 腎臓移植手術をして自宅療養中のインド財務相、アルン・ジャイトリー氏はSNSで皮算用を披歴していた。世界銀行が発表したレポートで、昨年の国内総生産(GDP)が二兆二千七百九十七億ドルとなり、フランスを超えて世界六位に浮上したことを受けての発言だ。だが、成長期待は脆くも崩れそうだ。新たな不良債権が日々発生し、その山が膨張を続けている。「不良債権問題は今がピークだ。来年には減少がはじまる」との巷の声を筆者が聞くようになって、もう四年が経過した。泥沼の銀行危機が収束する気配は全くない。

銀行界のずさんな経営体制

 まずインドの不良債権問題を簡単に振り返ろう。二〇一三年にインド準備銀行(RBI)総裁に就任したラグラム・ラジャン氏が、不良債権の微増に注目し、実態を調査した。その結果、民間公営を問わず各行に多くの引当金を積ませ、翌年度は不良債権が急増した。膿を出し切って収束に向かうと考えられたが、逆に不良債権は増え続けた。RBIは・・・