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政治

安倍「十月人事」政局の行方

三期目の主導権を争う「暗闘劇」

2018年9月号

 滅多に個人的な感情を表に出すことのない官房長官の菅義偉が珍しくストレートに喜びを語った。
「同じ秋田県出身者として優勝できるよう心から応援したい」
 全国高校野球選手権大会で秋田県立金足農業高校(秋田市)が八月二十日の準決勝で決勝進出を決めた時の菅の感想だ。
 無論、菅の高揚感の背景にあったのは金足農業の活躍だけではない。首相安倍晋三が直面する二つの重要選挙で菅が主導権を握りつつあるからだ。
「自民党総裁選と沖縄県知事選」
 より菅が存在感を発揮するのが前沖縄県知事翁長雄志の急逝に伴う知事選だ。
 菅はかなり早い段階で翁長がすい臓がんを患い、病状が深刻であることを把握した。地元の自民党沖縄県連や経済界には「候補者を七月中には絞り込むように」と指示を出している。
 菅にとって翁長は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐって、ほぼ三年半にわたって対立を続けた「政敵」でもあった。辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長の決定を違法として異例の裁判闘争に持ち込んだのも菅だ。裁判は国の勝利に終わったが、翁長は死の直前・・・