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連載

をんな千一夜 第19話

融通無碍な女権論者
石井 妙子

2018年10月号

《平塚らいてう》

昨年、秋篠宮家長女の婚約内定が発表され、お二人は並んで記者会見に臨まれた。その席上、交際相手の小室圭さんは、眞子さまのことを、「月のように静かに私を見守って下さる存在」と評され、皇室の一部から、「宮家の姫を月に譬えるとは。太陽のように自分のほうが目立とうとしているのか」と、早くも不興を買っていた―、とかいう週刊誌の記事を最近、目にする機会があった。女性を月に譬えてはまずいのか、と考えさせられ、ふいに思い出されたのが、この一節だった。
「元始、女性は実に太陽であつた。真正の人であつた。今、女性は月である。他に依つて生き、他の光によつて輝く、病人のやうな蒼白い顔の月である」―。
 女権論者・平塚らいてうが雑誌『青鞜』の創刊にあたって謳った、あまりにも有名な言葉だ。
 らいてうは明治政府の高官を父に、御殿医の娘を母に明治十九年、東京に生まれた。本名は平塚明。
 小学校を卒業後、東京女子師範学校附属高等女学校から、日本女子大学校へ。当時としては最高の学歴だが、良妻賢母になることを前・・・