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政治

「安倍不況」がついに始まる

米国追従「円高」で沈む日本経済

2018年11月号

 場所は二年前の伊勢志摩サミット(先進国首脳会議)の記者会見場。安倍晋三首相は突然このような考えを披歴した。
「世界経済はリーマンショック以来の大きなリスクに直面している」
 これに対して、世界の指導者たちは「日本は何を言っているんだ」という反応。当時のキャメロン英首相は「日本の認識を共有せず、世界経済を楽観視する」とまで言っていたというし、メルケル独首相も「危機とまでいうのはいかがなものか」と冷ややかだった。
 結局「リーマンショック級の経済危機」などは発生せず、首相の予測は世界の笑いものにされただけの結果に。消費税率引き上げ延期の理由が見つからないためのこじつけだったが、世界に笑われようが自らの政治目的のためなら堂々とフェイクを言い放つ首相の傲慢さが際立った一件だった。
 それから二年経った今回も同様だ。今年九月下旬の日米首脳会談で開始が合意された通商交渉。首相は「FTA(自由貿易協定)ではない」と説明し、「物品貿易協定(TAG)」と呼ぶのだと強弁を続けた。
 しかし、共同声明を読めば、日米はモノの貿易に加えてサービスなどの話し合い・・・