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連載

西風450

京都人が愛した京大の「変容」

2018年11月号

 本庶佑氏のノーベル医学・生理学賞の受賞により、京都大学出身のノーベル賞受賞者は七人になった。東京大学出身の受賞者は八人だが、その中には川端康成と大江健三郎という二人の文学賞受賞者、佐藤栄作という平和賞受賞者が含まれる。科学分野だけで見れば、京大はいまだに「ノーベル賞に最も近い大学」と言えるだろう。また、二〇一二年に医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授(神戸大出身)や、〇八年に物理学賞の栄冠に輝いた小林誠、益川敏英両氏(ともに名古屋大出身)のように、他大学出身の受賞者が京大ゆかりの研究者であることも特徴だ。
 この事実は「京大の学生さん」を長年見守ってきた京都人にとっても小さな誇りになっている。なぜ京大からはノーベル賞受賞者が出るのか―。「東大のようなプレッシャーがかからない」「京都という風土が研究に没頭できる環境をつくる」などさまざまな理由が指摘されているが、誰もが口を揃えるのがリベラルな校風だろう。
 ただ近年はその自由さも制限されるようになった。東大路通と今出川通が交わる百万遍の交差点は京大本部キャンパスに近い。そのため、かつてはイベント告知や学生運動の「タテ・・・