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連載

広告を裏読みする 第1話

評価真っ二つの「ハズキルーペ」
本間 龍

2019年1月号

 二〇一七年度の日本の広告市場は約六兆三千億円と、ようやく十年前のリーマンショック前の水準を回復しつつある。広告費は景気のバロメーターだから、日本の景気が十年間足踏みしていたことの証明でもある。この間、技術革新やインターネットの普及で、広告手段が一層多様化していることは間違いないが、肝心の広告の中身はどうだろうか。
 広告業界だけでなく世間でもなにかと話題の「ハズキルーペ」のCMは、読者のほとんどが一度ならず見たことがあるだろう。本稿では、かつて広告代理店に身を置いた筆者の視点で、同社の宣伝広告を裏側から見てみたい。
 ハズキルーペのCMは、広告業界ではその評価が完全に二分されている。「ダサさの極み」と全否定する者もいれば、「モノが売れるCMとはこういうものだ」と高評価する者もいる。実はCMを作る広告屋には、大きく分けてCMや広告のコピーやデザインをするクリエイティブ担当と、筆者のような営業職担当という二つの人種がいて、考え方や価値観が全く違う。クリエイティブ関連の人々は、広告にオリジナリティを求め、他にない表現をしているかを追求する。だから商品名の連呼や、機能説明・・・