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社会・文化

原発事故から変われない日本人

畑村 洋太郎(畑村創造工学研究所代表)

2019年3月号


 ―福島第一原発事故から八年ですが、日本は何を学びましたか?
 畑村 何も学んでいないし、何も変わっていない。
 事故前は、起こり得るリスクについて徹底的に考えず、原発が津波に襲われ、水没することを考えていなかった。事故後も、「原発にどんな危険があるか」という、本質的なことを何も議論しないし、考えていない。
 日本では想像力を働かせて、みんなと違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ。「誰の責任か」ということばかりに目を向ける。
 そもそも、福島原発事故の本当のコストを、今も議論しない。一番大きな数字で「二十二兆円」というのを見たが、国がひっくり返るような大事故だったのだから、百兆円から五百兆円くらいはかかるだろう。これは国民みんなが負担することだ。

 ―企業の検査不正、政府の統計不正が起きています。日本はタガが緩んでいるのでしょうか?
 畑村 僕はそうは思わない。
 むしろ、その検査や基準・・・