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トランプと「ドイツ銀行」の黒い絆

融資総額「二十億ドル」が調査対象に

2019年4月号

 米国のロバート・モラー特別検察官が、トランプ政権のロシア疑惑を巡る捜査を終結し、「共謀確認できず」との結論を下した。
 ただ、個別疑惑の捜査が残っており、特に注目されるのは、トランプ大統領に過去二十年にわたって、二十億ドル(約二千二百億円)も貸し付けてきたドイツ銀行との関係だ。
 同行はロシアとの関係も深く、マネー・ロンダリング(資金洗浄)や詐欺、各種金融規制違反など、多くの疑惑が持ち上がっている。
 ドイツ最大手の銀行がなぜ、毀誉褒貶の激しい不動産業者にはまり込んだのか。その謎を解くには、国際金融史をひもとかなければならない。
 十九世紀創業の同行は、わずか二十年ほど前まで、ヨーロッパきっての名門銀行で、「ドイツを動かしているのは、政府ではなくドイツ銀行」と言われたほど影響力があった。行員は超エリートとして、国内で尊敬を受けていた。
 国際化が始まったのは、邦銀各行と同じ頃の一九八〇年代。九八年に米国の「バンカーズ・トラスト(バントラ)」を買収したことで、同行の運命が変わった。後に「ドイツ銀行史上最悪の取引」と評されることになる。{・・・