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経済

東京電力「解体処分」の機運再び

販売と原発部門「切り離し」の現実味

2019年4月号

「東京電力の原点は福島、そのことをグループ全員で共有したいと思います」
 福島第一原発事故から丸八年が経った三月十一日、東京電力ホールディングス(HD)社長の小早川智明は、改めて福島復興への決意を訓示した。すでにこのとき、小早川の胸懐には四月以降のグループ経営の主導権を握る人事案が温められていたに違いない。しかし、それは東電が丸ごと福島復興の“埋め草”にされ、消滅する契機となるかもしれないことを、本人は自覚していただろうか。
「やっぱり……」
 二日後の十三日に発表された幹部人事は、グループ内に納得と落胆を広げた。東電HD執行役副会長の廣瀬直己が執行役を退任し、名ばかりの「副会長」に棚上げされることが決まったからである。
 二年前、経済産業省および原子力損害賠償・廃炉等支援機構と対立した廣瀬が社長を更迭され、福島専任の執行役に退いたのは周知の通り。実際は福島県にはほとんど赴かず、逆に執行役会には毎回出席し、事あるごとに小早川ら後輩の経営方針に容喙してきた。そればかりか、講演活動ではしばしば小早川・・・