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経済

製造業「不正の連鎖」をどう止めるか

見識なき経営者が増えすぎた

2019年5月号

 日本を代表する大手製造業の品質不正が止まらない。神戸製鋼所に始まり、化学、自動車、建設へと連鎖的に検査や工法の不正が発覚。スズキ、IHI、大和ハウス工業も最近、不正企業リストに連なった。「日本のモノづくりの劣化」と切り捨てることは簡単だが、解決にはつながらない。深層にある「業界の同調体質による不正」「国内市場縮小を受けた収益確保のための不正」「社内圧力による不正」の三つの類型を認識し、解決するしかないのだ。重要なのはいずれも現場ではなく、経営の根幹の問題であることだ。経営トップが取り組まなければ、日本の製造業の不正もグローバル市場での地盤沈下も続くだろう。

「品質より収益」が当たり前に

「自動車業界の不正はもはや慣れっこだが、今回のスズキは悪質すぎる」。自動車業界に詳しいアナリストのひとりはこう語る。二〇一七年九月の日産自動車の完成車検査の不正に始まり、SUBARU、マツダなど大半の自動車メーカーで発覚した検査不正は、「資格を持たない作業員による検査」で安全には実質的な影響がないものが多かった。燃費不正は消・・・