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経済

中部電力を蝕む 「JERA」の罠

東電と経産省が「株式上場」で策謀

2019年5月号

 東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資する合弁会社、JERAが四月一日に両社の国内火力発電事業を承継し、完全統合を果たした。国内の火力発電総容量は六千七百万キロワット、LNG(液化天然ガス)の取り扱い総量は年間三千五百万トン。数字上は世界最大級のエネルギー会社が船出したことになるが、内部からは早くも不協和音が聞こえ始めている。根底にあるのは、東電に対する、中電の不信感だ。
「もう後戻りはできない」。JERAの新体制が発足したことを受け、大手電力のある幹部は、こう漏らした。憐憫の情を向ける相手は、中電だ。「JERAは、中電にとっていいことが何もない。完全に東電と役所の罠にはまった。他電力の忠告を聞かなかった中電の自業自得だ」とこの幹部は嘆く。

出資したがる大阪ガス

 JERAは二〇一五年四月に設立。それ以来、東電と中電の燃料・発電事業の統合を段階的に進めてきた。今回の完全統合により、JERAは売上高三・六兆円、総資産三・八兆円、要員数四千五百人、上流投資案件五件、LNG輸送船団十八隻、海外発電・・・