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WORLD

中国が築く「反米ブロック経済圏」

世界を分断する「一帯一路」の本性

2019年6月号

 二五%追加関税の実施、ファーウェイ叩きの拡大など、トランプ政権の中国封じ込め政策が習近平政権をブロック経済圏の構築に向かわせている。「一帯一路」参加国への投資積み上げ、エネルギーや通信のネットワーク拡充、人民元取引の普及などが目下の政策だ。一帯一路の地理的概念はすでにユーラシアからアフリカ、南米、北極圏まで膨張しており、反米国家の政治的糾合も視野に入る。米ソ冷戦時代の「鉄のカーテン」より緻密な「二十一世紀の万里の長城」が世界を分断に向かわせようとしている。
 北京中心部にある王府井の老舗、新華書店。一階の入り口に近い棚に平積みされ、次々に売れていく本がある。『新・持久戦論』―、毛沢東が抗日戦争時代の一九三八年に出版され、文化大革命期には一家に一冊はあった書籍だが、改革開放後は忘れ去られ、ほこりをかぶっていた。それを昨年、増補改訂して復刻出版された。米中対立がエスカレートするなかで、中国共産党は国民に持久戦を覚悟させようとしている。
「持久戦論」で毛沢東は戦いを三つの段階に分け、対応を説明する。第一段階は日本の侵攻に戦略的守勢をとる時期、第二段階で反攻準備に取りかか・・・