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連載

Book Reviewing Globe 421

日米同盟「不可測性」への備え

2019年6月号

 二十一世紀の日本の安全保障にとってゲームチェンジャーとなりうる環境変化は、北朝鮮に対する抑止力の破綻、アジアの海洋安全保障における米国の支配力の不可逆的弱まり、そして尖閣諸島を防衛するに当たっての米国の信頼性の喪失の三つである。
 もし、これらのシナリオが現実のものとなったら、日本の安全保障政策は従来とは異次元の性格を帯びることになるだろう。そこでは中国との同盟、ないし日本の核保有という選択肢もありうる―。
 そのような危機感を湛えた未来図を指し示したのは米国の知日派を代表するシーラ・スミスである。日本の防衛問題の専門家。有力シンクタンク、外交問題評議会(CFR)の上級研究員を務めている。
 北朝鮮の核・ミサイルの脅威については、日本は米国の核抑止力の信頼性に不安を抱き、「米国の核の傘供与のさらなる確証を求め始めている」。オバマ政権の核廃絶ビジョンからトランプ政権のINF全廃条約破棄へと米国の核政策が激しく動揺する中、北朝鮮の非核化に対してトランプ政権は準備不足のまま米朝サミットにつんのめり、行き詰まっている。
「日本は北東アジアの安定のために・・・