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連載

西風457

滋賀県の誇り「琵琶湖」に異変

2019年6月号

滋賀県民にとって琵琶湖は誇りであり、その愛情は湖より深い。大阪の人間が「滋賀に琵琶湖があるんちゃう、琵琶湖の周りに滋賀がへばりついとるんや」とからかっても、それを笑って受け入れる。その琵琶湖で前代未聞の事態が起き、地元に動揺が広がっている。
 四月に入り滋賀県は、「琵琶湖の全層循環が確認できず、今年は見込めない」と発表した。全層循環とは、冬の寒い時期に湖表面の水が冷えて比重を増して湖底のほうへ沈むことで、上層部と下層部の水が混ざり合う現象のこと。上層の水に溶け込んだ酸素が下層にいきわたるため「琵琶湖の深呼吸」などともいわれる。
 あれだけ大きな湖なので、場所によっては表層の水が湖底に届いているところもあったが、滋賀県が設定する観測ポイント一カ所で循環が確認できなかった。今年の冬が暖かかったことが直接の原因で、今後の動向は予測困難だ。
 例年二月上旬から中旬ごろに観測される全層循環。過去、最も遅かったのは二〇〇七年だった。三月十九日に全層循環を終えたこの年、ハゼの仲間の魚で琵琶湖の固有種であるイサザ(絶滅危惧種)やエビ類が湖底で死んでいた。
 研究・・・