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連載

日本の科学アラカルト 107

超高度情報化社会を支える 「磁化反転」技術の開発

2019年7月号


 今ではほとんど姿を消したテープレコーダー。令和生まれはもちろん、平成生まれの世代でさえほとんど見ることはないだろう。CDさえあまり目にしなくなった昨今、かつて全盛を誇ったテープが我々の身の回りで復権することはなさそうだ。
 磁気を使って情報を記録する技術が開発されたのは十九世紀末。米国の技術者が針金を磁化させて音声データを記録する手法を発明した。針金を媒体とした実用的なレコーダーも、一九〇〇年にパリで開催された万博で披露された記録が残っている。大量データの書き込みができるよう、「磁気テープ」を使った方法が発明されたのは一九二八年のことだった。それから百年近くが経過するが、実は磁気テープ自体はいまだに使われている。主にコンピュータのデータバックアップや、アーカイブ作成用に「リニア・テープ・オープン(LTO)」という媒体が利用されているのだ。
「テープ」だけでなくディスク(円盤)を使ったものも含め、磁気記録は現役である。その原理は基本的に、発明当初から変わっていない。記録する際には媒体上にN極、S極の磁力情報を残し、読み取る際にはその方向を読み取り、電気信・・・