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経済

東京ガスが原発事故処理の妨げに?  顧客奪われた東京電力の恨み節

2019年7月号公開

 東京ガスの収益が膨らむ裏側で、東京電力ホールディングス(HD)がその割を食い、福島第一原子力発電所事故の処理にも影響する恐れがあるという。東電HDの利益が原発事故の処理費用に回される仕組みになっているからだ。
 六月末までの東ガスの電力契約申込件数は二百二十万件。東電HDの顧客の一割ほどが奪われた計算だが、利益はそれ以上に減っている。小売会社の経常利益は、二〇一六年度は七百四十七億円、一七年度は一千百五十九億円だったが、一八年度は七百二十七億円と落ち込んだ。電力業界関係者は「東ガスが利益率の高い客を奪っている。東電HDはガス自由化で逆に東ガスの客も取っているが、ガスの利益率が悪く、電力顧客の流出をカバーできない」と分析する。
 東ガスは一九年度中に契約件数二百四十万件の目標を完遂したい考え。東電HDからは「福島復興に悪影響を及ぼす。中部電力と東邦ガスのように、どこかで手打ちすべきだ」との愁訴が聞こえてくるが、東ガスは耳を貸さない。利益を福島に還元させることを条件に存続が許された東電HDが、肝心の利益を上げられない状況だ。 (2019.8.13公開)


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