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米政権「華人女性閣僚」に高まる期待

米中衝突に影響大の「チャオ一族」

2019年9月号

 米国が中国に対して、貿易、香港、台湾と次々と戦線を拡大する中、台湾系米国人の閣僚、エレーン・チャオ(趙小蘭)運輸長官の動向が、密かな注目を集めている。
 彼女の夫は議会トップの、ミッチ・マコネル共和党上院院内総務。チャオ一族の海運業は中国政府要人の間に強力なパイプを持っている。一族が、あまりに米中双方の上層部につながることから、「利益相反」を指摘する報道まで飛び出している。
 長官の父親、ジェームズ・チャオ(趙錫成)氏の生涯は劇的である。一九二七年に教育者の家庭に生まれ、中国の国立交通大学(現在の上海交通大学)、呉淞商船専門学校(現在は上海海事大学)に進学した。国共内戦で共産党が優勢になり、台湾に逃れた。そこでやはり中国から逃れてきた、朱木蘭(ルース)と結婚。エレーンは夫妻の長女として、五三年に生まれた。
 父親は五八年に米国留学の機会を得た。三人目の娘を宿していた妻と二人の娘を残して単身渡米。家族が米国で再会したのは、三年後だった。エレーンは八歳で、「全く英語が話せなかった」と後に語っている。父親は米国で海運会社「フォアモスト」社を創業。アジア事業で成・・・