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経済

マイナス金利で狂乱する世界経済

欧米金融界も「日本化」の泥沼へ

2019年10月号

「長期にわたって高いレベルでの金融緩和スタンスを取る必要がある」。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は九月十二日の理事会後、こう述べて中銀預金金利のマイナス〇・四%からマイナス〇・五%への引き下げを含む総合的金融緩和策を発表した。「低成長と低イン
フレ」「デフレスパイラル」を意味する「日本化(Japanification)」を阻止するためだ。しかし、「低金利の常態化」という意味では、欧州はすでに日本より日本化しつつある。ECBが「日本化阻止」に躍起になるなか、欧州の債券市場や市中銀行で「金融市場初」の異常事態が次々と発生。その波は米国にも及びつつある。
 利回りがマイナスの債券は、世界合計(九月初め時点)で十七兆ドルに達している。そのうち九割近くが日本と欧州の債券で、それぞれ四割強を占めている。
 こうしたなか、八月の欧州債券市場に目をやると、ドイツの超長期金利(三十年債利回り)は急落してマイナスに突入。ドイツのすべての国債がマイナスとなり、日本のそれよりはるかに低い状況になった。また一時的に、三カ月物と十年物で利回りが逆転したことで「イールドカーブ全体が・・・