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経済

銀行「口座維持手数料」導入の虚実

「顧客離れ」で誰が得するのか

2019年11月号

 大手銀行が手数料値上げや新設の動きを加速させている。みずほ銀行は十月から窓口での振込や両替手数料を引き上げ、来年三月からはATMでの振込手数料も引き上げるとともに「みずほマイレージクラブ」のサービス縮減にも踏み切る。三井住友銀行(SMBC)も今年十二月から海外送金の手数料を倍近く値上げする一方、新たに「硬貨入金整理手数料」を設定。店頭に大量に硬貨を持ち込んで入金する顧客から五百~一千円の手数料を徴収する。
 そんななか盛り上がりつつあるのが「本丸」ともいえる口座維持・管理手数料の導入論議だ。
 すでに日銀や金融庁は容認論に傾いている。三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)副頭取を務めた鈴木人司日銀審議委員が八月末、熊本市内での講演で「貸出金利が一段と低下した場合、収益の下押し圧力に耐え切れなくなった金融機関が預金に手数料を課し、預金金利を実質的にマイナス化させることも考えられる」として、導入の可能性に言及。金融庁幹部の一人は「サービスの対価として口座維持手数料を徴収するのは自然なこと。銀行が利用者の厳しい視線にさらされることになるため、むしろサービス向上につながる・・・