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社会・文化

リスク増す「首都直下地震」

足りない「前兆研究」と減災への備え

2020年1月号

 師走の日本列島は、寒さに身震いするかのように揺れ続けた。北海道や東北地方では比較的大きな地震も観測され、停電などの被害も出た。首都圏に住む人にとって気になったのは、十二月上旬に相次いだ北関東での地震だ。可能性は常に提示されながらも、とらえどころがない「首都直下地震」の危険性はどれほどあるのか。東日本大震災以後の地震研究をみると、今後の地震防災の方向性が浮き彫りになってきた。
「これらの地震の関連性はみられない」
 十二月五日、気象庁は北関東で連発した地震についてこう断言した。十二月三日に茨城県南部で、マグニチュード四・七、最大震度四の地震を観測したことを筆頭に、震度三~四の地震がこのあと立て続けに五回も起きたことで、周辺での不安は増大した。折しも、NHKが十二月一日から一週間にわたって大型特集を組んでいたこともあり、「首都直下地震」を想起する人が多かっただろう。
 気象庁の発表はこうした不安を打ち消す効果を狙ったものだが、どれほど意味があるのか。そもそも現状の気象庁は、「〝前兆現象〟を観測して予知することはできない」という学会主流派の立場に立っており、特・・・