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連載

新大学評判記 第1話

名古屋大学 岐阜大「合併」の焦燥と挑戦

2020年1月号

 年の瀬になって大学入学共通テストの記述式試験の実施見送りが決まったが、受け入れる大学側にとってはそれほど大きな問題ではない。大学業界、中でも国立大学の関係者が二〇二〇年の動きで最も注目しているのは、名古屋大学と岐阜大学の合併である。両校は四月一日に「東海国立大学機構」を設立させ、揃って傘下に入る。地方国立大の存続が危ぶまれる昨今ではあるが、旧帝国大学であり、押しも押されもせぬ地域トップの名大がなぜ岐阜大との合流に踏み切る必要があったのか。
 名大は旧帝大の中で最後(一九三九年)に設立され、学生数や国からの運営費交付金の支給額は、七帝大の中で最小だ。一方で名大は今世紀に入り六人ものノーベル賞受賞者を輩出した(出身者、所属者を含む)。教員一人当たりが獲得した科学研究費補助金、三百五十万円(一八年)という金額も、東大、京大に次ぐ数字である。
 つまり名大は国内有数の研究拠点であると同時に、我が国の製造業の中心地ともいうべき東海エリアにおいて、重要な理系人材の養成所になっている。事実、トヨタ自動車には約一千七百人もの名大OBがおり一大勢力になっている。
 こうし・・・